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【日本を支える交通網 vol.1】進む国際化、オリンピックに向けた日本の空港事情

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半世紀前、東京はあることに湧いていた。1964年、東京オリンピック。外国からも国内からも、多くの人がひとつの都市に集まるオリンピックにおいて、交通の整備は欠かせないものだ。いまの日本を支える、首都高速道路や東海道新幹線、これらが完成したのも、オリンピックが開催された年のことだった。
6年後、再び東京にオリンピック・パラリンピックがやってくる。このシリーズでは、2020年に向けて東京の、そして日本の交通がどんな変化を見せるのか、その姿に迫る。vol.1 では、海外からの玄関口、日本の空港のいまについてまとめていく。

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日本の二大空港

羽田空港と成田空港、この2つの空港は東京近郊に位置し、人々の移動や物流を支える、日本の二大空港になっている。1931年、最初に開港したのは羽田空港だった。戦争を終え高度経済成長を遂げた日本、必然的に機能を拡大していった羽田空港も、1960年代に入ると国際線の増加に徐々に追いつかなくなり、首都圏内に新しい空港の建設が検討される。そこで新たに建設が始まったのが成田空港。海外からの玄関口として、国際線の発着をメインに考えられていた。しかし、騒音などの問題から、地元住民との間に犠牲者がうまれてしまうほど激しい反発運動が起こる。成田では、こうした歴史的背景や、空港を離発着できる時間が6:00〜23:00に制限されていることもあり、本来は建設予定であった3本目の滑走路は現在でも建設が凍結されたままだ。現在稼働中の滑走路は、羽田空港が4本、成田空港が2本となるが、近年ではまた新たな問題が見えてきた。

滑走路x

 

国際化の中に生まれた問題

いままさに国際化が進んでいる日本。昨年日本を訪れた外国人は1000万人を超え、海外に行った日本人は1700万人にも上る。近年の国際線利用客増加に合わせて、羽田・成田の両空港では、発着便数を増やすことが求められてきた。羽田空港では今年に入って、国際線ターミナルの拡張工事が終わり、17都市55便だった国際線は23都市77便に強化された。成田空港においても、今年度中に機能強化を行う計画で、東京から近い両空港はこれからますます国際化が進んでいくことになる。そんな日本の玄関口とも言える空港で、6年後にある問題が起きると言われている。滑走路不足だ。

 

滑走路が足りない?

ここまで説明してきた機能強化には限度がある。施設や設備の限界もそうだが、離着陸の際の騒音規制など、法的な問題もあり、現在の運用方法では6年後の東京オリンピックで滑走路が不足すると言われている。これらの問題に対して、国土交通省や東京都では、既に様々な解決策が検討されている。今回はその解決策について、大きく3つに分けて紹介しようと思う。

 

1.新しい滑走路をつくる

まずひとつめは、羽田・成田のいずれかの空港に滑走路を増設するというものである。単純に聞こえるが、現実にしようとすると問題は多い。大きい物で300トンもの重量の機体が離着陸する滑走路は、強固に造る必要があり、新設するとなれば時間もお金もかかる。特に羽田空港の場合は、海上に建設することになると見られ、通常の陸地に建設するよりも工費がかかることは間違いない。比較的高いと言われている、福岡空港の滑走路で1800億円と言われているが、埋め立て・桟橋方式で海上に作られた羽田空港のD滑走路は6000億円と、その差は歴然だ。また成田空港で凍結中の滑走路建設案についても、騒音に関する問題がなくならない限りは難しい。

新滑走路x

 

2.規制緩和によって離着陸数を増やす

ふたつめは規制緩和である。羽田空港で現在検討されている緩和案は、騒音の問題で規制されていた東京上空を、飛行ルートとして認めるものである。これによって上空の混雑が低減され、離着陸数を増やすというものだ。この案については既に検討が始まっており、現在考えられているものの中では最も現実味のある案といえるだろう。成田空港では規制そのものをなくすことはできないとしても、開催期間中だけでも離着陸の可能な時間を拡大するなどの対策が考えられる。

 

3.いまある施設・設備を有効活用する

もうひとつは現状ある施設・設備に手を加えることで機能を強化するものだ。例えば羽田空港では4本ある滑走路のうちの2本が交差しており、このうちの1本をずらすことで離着陸数を増加させられると言われている。また成田空港では、誘導路を増設することで旅客機を素早く循環させ離発着の効率を上げる案がある。2つの空港とは別に、横田基地にターミナルを建設し、民間機の離着陸を可能にするというものがある。数年前から検討が進められており、こちらも周辺からの理解が得られれば実現する可能性は十分にある。


日本が目指すもの

政府は6年後までに来日客を2000万人まで増加させることを目標にしている。単純に現在の2倍の機能を備えるには、大規模な整備は欠かせなくなるだろう。50年前に大きなアピールポイントとなった日本の交通を、再びアピールポイントにできるかどうかは、玄関口である航空にあると言っても過言ではない。羽田・成田の両空港は、外国の主要都市にある空港と比べても、利便性が高くないと言われている。東京五輪までの6年間という時間を使って、周辺環境も含めた改善が必要だ。日本に着いた時から、最高の「おもてなし」を提供するためにも、妥協のない整備を期待したい。

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【日本を支える交通網 vol.2】これ一枚でどこでもスイスイ!?あなたのICカード全国で使えます!

http://japanese-team.jp/archives/2156

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ライター名:三井田尚寛 TOKYO PLUS+