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【歴史に残るオリンピックの逆転劇】我こそは強運という方必見!強運スケーターが手にしたオリンピック至上最幸の金メダル
四年に一度、世界が熱くなるオリンピック、パラリンピック。わずか一秒以下の時間の中に熱いドラマが生まれる――。その中から、まさに会場を一体化させたと言うにふさわしい伝説の逆転劇を3つ紹介する。今回はその第一弾、”幸運の女神”が微笑んだのは……
ソルトレイクシティ ショートトラックスピードスケート男子1000m
オリンピックには魔物がいる。そんな話をときどき聞くが、これはその象徴的な出来事である。
2002年ソルトレイクシティオリンピック
オーストラリア スティーブン・ブラッドバリー、当時世界ランク35位。
言ってしまえば彼はメダル候補からは遠い選手だった。そんな彼が自国に持って帰ったもの、それは冬季オリンピックでは南半球初となる金メダル。
彼はどのようにして世界一になったのか?
実は彼は、世界で最も幸運な男だったのだ。
1回戦目で組内1位をとった彼は準々決勝へ出場。3位でゴールしたものの他の選手に失格が出たため、なんと準決勝に進むこととなった。(スピードスケートでは転倒した選手への接触などで失格が出ることがある)
二度あることは三度あるというのはこのことだろうか。
準決勝、スタートから出遅れたブラッドバリーの前で2人の選手が転倒、更に1位でゴールしていた日本人選手が失格となり、まさかの一位通過。決勝進出が決まった。
迎えた決勝戦。彼はまたしても遅れをとり、ダントツの最下位スタート。その後もかなり引き離される。後のインタビューで自身が語っているように「とてもついていけるようなスピードではなかった」のだ。
しかしここでゴール直前、彼の前を行く選手たちが一斉に転倒。転倒した選手たちが立ち上がろうともがく中、ブラッドバリーは1人涼しい様子でゴールを果たした。
「自分が一番早い選手でないことは明らかだったけど、作戦通りだったね。先頭集団の転倒を予想していたんだ」と後に語ったブラッドバリー。金メダルは自身も予想していなかったことだろう。
スケート競技に転倒はつきものであるが、こうも彼のまわりで続くとは……。彼のまわりで転倒した選手たちはきっと「オリンピックの魔物」の存在を実感したに違いない。
金メダルを讃え自国では切手も発売され、俗語辞典には「棚からぼたもち」の意味でブラッドバリーの名前も掲載されている。
魔物は彼のまわりの選手に襲い掛かり、勝利の女神は彼に微笑んだ。
運がよかったとしか言いようのないような勝利だった。
しかしブラッドバリーは全く努力をせず金メダルを獲得したわけではない。彼はこの金メダルの前に、2度ほど命に関わる事故を経験している。2つともスケート中の事故で、大量出血、100針を超える大手術と首の骨を折るという大事故だった。
怪我を乗り越えて競技を続けてゆくというのは、多くの選手が経験していることだろう。しかし彼の金メダルは、選手としてだけでなく、命に関わる怪我を経験してもなおスケートを続けるという彼の気持ちがあったからこそ得られた勲章なのかもしれない。
第二弾では水泳、”執念の金メダル”をご紹介します!
ライター名:AYAKA